
EPISODE 10 〜 Fモータース・Wさん
「さちおさん、たいへんお待たせしました! ご試乗のほう、いかがでした?」
現れたWさんは二十代、派手なスーツにウェーブした金髪で「いかにも中古輸入車店の営業」ながら、瞳を輝かせハキハキ話す、気持ちのいい若者でした。
「うん、とてもよかった・・でも、試乗希望ってメールしたよね?」
「えっと・・はい・・、で、ご試乗されたんですよね?」
「まぁしたけどね」
Wさんの無邪気な「ならいいじゃん」オーラに、私も苦笑しつつ話を流しました。
別にケンカしたいワケぢゃなく、単に気持ち良く買いたいだけなんですから。
クルマは気に入ったんで、後はオプションの問題。
「CDつけたいんだけど、どんなのがいくら?」
「お薦めしているのがナカミチのCDチェンジャーです。1DINに6連装で収まるし、ポルシェの内装にもベストマッチですよ」
ってことは"室外機"じゃなくて手元でCD抜き差しできる・・これは便利カモ!
「それからさー、今VWに付いてるカーナビ、外して付けられる?」
「はい、できます。でも取り外しと取り付け、それぞれ工賃がかかるから、ちょっと足せば新品買えちゃうんですよね」
工賃の試算をしてもらったところ、確かに高い(まー新品よりはずっと安いけど)。
「それにさちおさん、あのダッシュボード型のモニタはオープンカーには似合わないですよ。インダッシュタイプにされません? それからあの角出しタイプのアンテナも・・皆さんフィルムタイプのアンテナにされてますよ」
「なるほど・・よし、じゃー楽ナビ付けてフィルムのアンテナ付けた時の数字出して。さっきのCDチェンジャーも入れて」
「かしこまりました♪」
Wさんの客対応は一所懸命な熱意が感じられ、私の気分も良くなってきました(会話も噛み合ったし・苦笑)。
見積書を打ち出して、Wさんが戻ってきます。
やっぱなー、それなりにまとまった金額になるわなー・・さすがにローン嫌いの私も、ローンを考えましたね。
この後VW下取りも相談したけれど、好条件ではなかったしWさんも積極的ではなかったので、別で売ることにしました。
物件は文句なしで気に入った。価格も相場よりはずっと安い。ここ数ヶ月市場ウォッチしてたけど、絶好のチャンスなのは間違いない。
不安材料は「等々力は結構遠いし、メンテや修理の時はどーしよー」「試乗対応へのシコリ」の二点。
「メンテや修理の時はどうすればいいの?」
「ウチでも責任を持って行いますが、お近くのPCに持ち込まれても大丈夫です。もしできな
いと言われたら、常識的にPCがおかしいです。ウチからも話を通しますのでご安心ください」
「いかがでしょう、さちおさん?」
Wさんの問いかけに、私もそろそろファイナル・アンサーです。
残る問題は、感情のシコリだけ・・これはカネで解決しよう(笑)。
「ここからいくら引ける?」
「いや〜、さちおさん、ウチもギリギリでお出ししてるんで、勘弁してください」
「あっそ・・じゃ、なんかオマケつけてくれない?」
「オマケですか・・そうですねぇ・・じゃコーティング、サービスさせていただきます」
「う〜ん、それならやっぱカネがいいなぁ・・よし、 ○○万にしてくれたら、今決める」
「ウゥ〜〜ン・・え〜〜っと・・さちおさん、ちょっと上に確認しますので、お待ちいただけますか?」
「うん、待ってるよん」
ガラスの向こうはすっかり暗くなり、冷たい雨がそぼ降っている・・冷めたコーヒーを口に運び、煙草に火をつけ待つ私。
「お待たせしました・・さちおさん、決算ということで、了承取れました」
「ありがとう。・・じゃ、契約書持って来てください」
「ありがとうございます!」
実はこの後、ナビのビーコンが見積に入っていなかったことが判明し、料金調整もありました。でも基本的には互いに譲るべき点は譲り、紳士的に交渉ができたと思っています。
契約書のサインやら各種書類の説明やらを済まし、ひと通り用事が終わりました。
帰り際、私はHさんをつかまえ、言ってやりましたよ。
「買ったよ、アンタが試乗したら買わなきゃダメってゆーからさ」
「(コクン)・・私の言い方に悪いところがあったとしたら、お詫びしたいと思います」(どっちもどっち爆)
そんなこんなの帰り道。
冷たい雨の夜でしたが、私の心は晴れ渡り、胸は高鳴っていました。
「おい、まぢかよオレ・・買っちゃったよ、ぽるしぇ!!」
〜続く〜
2002,07.21. さちお